2012年4月20日金曜日

僕のサイボウズ・ラボ生活(3)

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今日の僕は風邪をひいている。元気がない。こんなときに重要なコードを書いてもどうせ間違えるだけだと思うので、それはしないで、ブログを書けるところまで書くことにした。今日書かないと次に書けるのはいつになるかわからないし。

サイボウズでは、自社製品のグループウェアを自分たち自身でも使っているのだけど、その使い方はちょっと普通ではない。普通は、会社の総務からのお知らせとか、上司からの通達などのために掲示板が使われているのではないかと想像する。でもわが社はそうではない。・・・いや、そういう普通の使い方もしているけど、そうではない使い方もしているのだ。そしてその「普通ではない使い方」のほうがむしろメインだと思う。

古くからのOSASK-Wikiを知っている人なら覚えているかもしれないけど、僕は「ひとりごと」を書くのが好きだ。話が長くなったらブログに書いたりもした。・・・実は、サイボウズにもこれに似た社内文化がある。それは「日報」だ。

社員ひとりひとりに掲示板のスレッドがある。今日はこんなことしました、これっておかしいと思いました、こんな苦労をしました、などなど、いろいろだ。多くの人の日報は内容がとても個性的で、それを読むだけでも楽しい。僕の日報もまあまあ評判がいい(えへへ)。もちろん日報の内容にお返事やアドバイスが書かれることもある。こうしてみんな自席から遠い人とも容易にコミュニケーションができている。僕は松山オフィスの人たちすら身近に感じている。

日報スレッドを持っていない人もいる。つまり強制ではないのだ。週報の人もいるし、不定期の人もいるし、書かない人もいる。強制ではないということはたぶん重要で、強制ではないからこそみんな無理なく楽しめる範囲で書けているのだと思う。

以上の話はサイボウズ本社でのこと。サイボウズ・ラボに至っては、もっとすごい。日報のさらに上を行く、時報、分報、とでもいえそうな頻度で書きまくる社員がいるのだ。 僕じゃないよ、さすがの僕もそこまではできない。・・・本社のみんなはこのラボの掲示板は見えないんだよなあ、いやあ、このすごさと面白さを見せてあげられないのが残念だ(笑)。

社内にはWikiがあるのだけど、Wikiを使って情報を収集・要約するなんていうのは、僕にとっては得意中の得意だ。(企業秘密に抵触するかもしれないので)詳細は書けないけど、以前情報をどうやってまとめようかという話があって、僕が「ああ、それならWikiでできますよ、承認とアカウントください、すぐにやります」と安請け合いして、一気に作った。そして翌日、そのWikiサイトはとてもよくできていると高く評価してもらえた。

さて、この節で僕が言いたいことはこうだ。・・・僕は入社前からOSASK計画の中でいろんなことをやってきた。しかしそれらは趣味というか遊びみたいなもので、まさか就職後に役立つなんて思ってもみなかった。・・・インターネットだけで仲間たちとどうやって低コストで効率よく(そして楽しんで)情報共有をするか、僕はいつの間にかその方法を身につけてきた。このスキルがこの会社では役に立ってしまうのだ。それどころかキミはすごいねーとまで言われてしまうのだ。いったい誰が予想できただろう。人生どんなことでも無駄になんかならないなんていう(理想論のような)格言があるが、まさか本当にそうだったなんて!

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サイボウズ・ラボに入って毎日の楽しみの一つは、お昼時間の雑談だ。ラボの雑談は、実に知的で、僕にとってはそれがたまらなく楽しい。常識に縛られずに、純粋にロジックだけで考えたらこうだよね、みたいな話もある。こういうのは楽しい。常識を疑うのは楽しい。

いやそれがなくても、あの西尾さんがラボにはいる。西尾さんを観察しているだけでも十分に楽しい。いつも予想外の何かをしてくれる。

2012年4月2日月曜日

僕のサイボウズ・ラボ生活(2)

(3)

今日は僕の気構えについて書くところからはじめようと思う。

僕は信用されることに弱い(笑)。特に、僕が何の根拠も提供できていないうちから信用されたり期待されると、それに報いたいという気持ちが非常に強くなる。

僕はラボに入るとき、実績らしい実績がなかった。いや、確かに未踏ユースには採択されたし、本を書いてそこそこ売れるという(僕にとっての)快挙はあった。でもそんなことはサイボウズやラボの役に立つわけではない。サイボウズはwebアプリをメインに開発する会社なのに、僕は自作のOSにネットワーク機能を付けたことすらない。僕は情報工学だってちゃんと勉強したわけじゃない。学位をとったのは物理学でしかないし、それだって有名な論文を書いたというわけじゃない。なんといっても僕はこの36歳になるまで正社員になったことがなく、「こいつは本当に組織内で協調して仕事ができるのか?」なんてつっこまれたら「多分できると思います」としかいいようがない状況だった。それに36歳といえばこの業界では定年扱いで転職不能な年齢であるとさえ言われる。

にもかかわらず、ラボは僕を採用してくれた。しかも待遇は実績のある人がラボに転職した場合と同条件だった。さしたる根拠もないうちから信じてくれたのだ。こうなったからには、僕の採用を決断した畑さんを後悔させるわけにはいかない。なんとしても会社の役に立ちたいと思う。そしていつか、「ああ川合を採用してよかった、あの決断は間違いじゃなかった」と思われたい。いやそれどころか「あの状態でよく彼が役に立つと見抜きましたね、畑さんの人を見る目は確かですね」って畑さんが評価されるくらいの成果を出したいと思う。ラボやサイボウズ本社の役に立ちたい。僕がこの恩に報いるにはそれしかない。

ちなみに僕のこの考え方はOSASK計画でもそのまま適用されていて、OSASKの評判が大してよくないときからOSASKの可能性を評価して協力・応援してくれた人(いわゆる古参メンバー)への僕の思いは、並々ならぬものがある。でも結局僕はあまり恩返しはできていないと感じている。申し訳ない。・・・もっといえば、僕がOSASK計画を始める前から僕のことを高く買ってくれていた友人は、僕にとっては極めて大切な友達である。苦しいとき、つらいとき、逆境にあるときでも友達でいてくれたのだ。まずは彼らを信頼すべきではないか。・・・おっと申し訳ない、脱線してしまった。

(4)

僕は最初はラボの中にいて仕事をしていたのだが、のちにその仕事が無事に片付いて、次の仕事が回ってきた。そしてそれはサイボウズ本社の人の隣の席に引っ越して仕事をするという環境だった。僕はここでとても印象的な体験をした。そのことを自慢しようと思う。

それは一言でいえば、「みんなとても真剣に仕事をしている」ということだ。

そんなの(本当は)当たり前だ。なんというか、もしかしたら僕の基準が腐っていただけなのかもしれない。・・・まあでもちょっと説明させてほしい。・・・普通、どんな組織でも、不平を言いながら仕事をするとか、言われたことだけをいやいややるとか、なんかそういう人がそれなりの割合で存在していると僕は思う。でも僕が座った席の周りの人たちにはそういう人が見当たらない。まずこれに驚いた。

さらに、たとえばこんな口論があった。相当にヒートアップしていたせいで、席は隣ではなかったけどよく聞こえた。2人は感情的にすらなっていたかもしれない。しかし、その内容は感動的なものだった。・・・「だってそうしたらお客様はわかりやすいけど使いにくいと思う、だからこっちのほうがいい」「でもこれは前の会議でみんなで決めたことなんですよ」「もう一度見てよ、これこれがそれそれだから、こっちのほうがいいと私はいっている」「でもそれだとサポート担当の人が大変に」「私たちはサポートのために仕事をしているのではない、お客様のために仕事をしているんだ」・・・

なんという意識の高さだろう。 内容はまあとりあえずおいておくとしよう、僕は議論の背景を知らないので。この時の結論がどうなったのかも実は僕は知らない。すごいのは、自分が楽をするために議論しているとか、誰かに責任を押し付けるために議論をしているとか、自分を守るために議論をしているわけではない、ということだ。完全に他人のために一生懸命になって声を荒げている。お客様やサポート係のことを思っているのだ。しかもこれは役職が上の人たちの会話ではない。僕と毎週一緒にご飯を食べるくらいのごく普通の役職の人なのだ。

僕は畑さんや青野さんやそのほか多くの人を以前から尊敬していたが、こういう場面を何度か目の当たりにするうちに、本社のすべての人を無条件に尊敬するようになった。背筋を正す思いだ。こんな高潔な人たちと一緒に仕事ができることが、僕はとてもうれしい。やりがいを感じる。誇らしくもある。

なんかこの会社にいると、人間はすべていい人で、よく知らない相手ならまず信じてみるべきだ、と自然に思えてしまう。よくわからない人だから見定めようとか、警戒しようとか、なんかそういう態度が当たり前だとずっと思ってきたけど、ここにいるとそんなふうに思ってきた自分が間違っていたような気分になる。・・・いや、たぶん僕は間違っていない。この会社が本当にいいところなんだと思う。だから僕も会社の人はまず信頼しようと思う。

これは社風なのだろうか。どうしたらこういう組織がこの人数規模でも成立するのだろう。僕はそれが知りたい。すごく知りたい。OSASKコミュニティの運営に応用できるかもしれない。僕は中学や高校の教員免許を持っていたが(更新しなかったのでたぶん失効した)、このノウハウがあれば学級運営も画期的に進歩するかもしれない。・・・それとも僕はたまたまいい部署を見ただけなのだろうか。それは正直分からない。しかし僕は今日まで本社の他の部署にもかかわったが、それでも僕のこの印象は全く揺らいでいない。なんとなくこの雰囲気は本社開発部全体に共通だと感じている。さらに社内の大きいイベントでの感触も含めて判断すれば、営業部や人事部などの人たちも非常にいい人なんじゃないかと感じている。

今回はこの辺で。・・・えっとこれは不定期に書いているので次回がいつになるかはわからない。もしかしたら何ヶ月もあくかもしれない。ということで期待はしないように。